引き出しを開けたら、モバイルバッテリーが4つ出てきた。使っているのは1つだけ。残りは何年も前のもので、1つは明らかに角が丸く膨らんでいる。捨てたいのに捨て方が分からず放置していた、という人はかなり多いはずだ。この記事では、モバイルバッテリーを普通ごみに出してはいけない理由から、実際に引き取ってくれる場所、膨らんだものの扱い、出すときの絶縁のしかたまでを順にまとめる。読み終われば、引き出しの奥のあれを今週中に処分できる。
普通ごみに出してはいけない理由
モバイルバッテリーの中身はリチウムイオン電池である。これは強い衝撃や圧力を受けると内部でショートし、発熱・発火する性質を持つ。ごみ収集車は積んだごみを回転板で圧縮する仕組みなので、電池入りの製品が混ざると、まさにその「潰される」工程で火が出る。
燃えないごみや小型家電、プラスチックごみに紛れ込ませても同じことが起きる。破砕施設でハンマーに叩かれれば結果は変わらない。モバイルバッテリーは「燃える/燃えない」で分けるごみではなく、リサイクルルートに直接渡す製品だと覚えておくのが早い。
水に浸けて放電させる、釘や穴を開けて壊す、といった自己流の無害化は絶対にしない。むしろ発火の引き金になる。

回収してくれる場所
出し先は大きく3つある。どれも基本的に無料で、手数料を取られることはまずない。近いところから当たっていけばいい。
| 出し先 | 手軽さ | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 家電量販店の回収ボックス | 買い物ついでに投入 | リサイクルマーク付きで状態が正常なもの |
| 自治体の回収 | 拠点や窓口まで持ち込み | マークがない、店で断られた、膨らんでいる |
| メーカー・ブランドの窓口 | 郵送または直営店 | 買い替えとセットで処分したいとき |
家電量販店の回収ボックス
ヨドバシカメラ、ビックカメラ、ヤマダデンキ、ケーズデンキといった量販店やホームセンターの多くには、店頭に小型充電式電池のリサイクルBOXが置かれている。運営しているのはJBRC(一般社団法人JBRC)というリサイクル団体で、加盟メーカーの製品を無料で回収する仕組みだ。サービスカウンターの脇や入口付近にあることが多く、店員に声をかければ場所を教えてくれる。
投入口は小さい。厚みのある大容量タイプは物理的に入らないことがあるので、その場合はカウンターで相談するか、後述の自治体ルートに回す。
自治体の小型充電式電池回収
回収ボックスで断られたときの受け皿が自治体である。ごみ処理施設での火災が全国的に増えたことを受け、環境省は2025年に市区町村へ向けて、家庭から出るリチウムイオン電池を自治体が回収する方向で体制を整えるよう方針を通知した。これを受けて、それまで「メーカーや販売店へ」と案内していた自治体が、拠点回収や窓口回収を始めた例が増えている。
集め方は自治体でまちまちで、区役所・清掃事務所・公民館・スーパーの拠点ボックス、月1回の危険ごみの日、といったパターンがある。自分の市区町村名と「リチウムイオン電池 回収」で検索すれば、たいてい専用ページが出てくるので、そこが最も確実な情報源になる。
メーカーやブランドの回収窓口
メーカー自身が引き取る動きも進んでいる。アンカー・ジャパンは2025年末に埼玉県内の直営店で他社製品を含むモバイルバッテリーの店頭回収を実証実験として実施し、2026年に入ってからは買い替えキャンペーンとして郵送・店頭での下取りも行った。回収ボックスの設置店舗も順次広げるとしている。実施期間や対象が区切られる施策なので、詳細は各社の告知で確認してほしい。
この流れには背景がある。2026年4月に全面施行された改正資源有効利用促進法で、モバイルバッテリーやスマートフォン、加熱式たばこが「指定再資源化製品」に追加された。メーカー・輸入販売事業者に自主回収と再資源化が求められるようになったということで、今後は「買った店・作った会社が引き取る」窓口が増えていく。捨てにくさは年々ましになる方向にある。
回収ボックスに入れられないもの
ここが一番つまずくところだ。回収ボックスは万能ではなく、入れてはいけないものが決まっている。
膨らんだもの
膨張・発熱・液漏れ・破損のいずれかがあるものは、JBRCの回収ボックス対象外である。中でガスが発生している状態なので、他の電池と一緒に詰め込まれるとリスクが高い。店頭のボックスに黙って入れず、自治体の担当窓口かメーカーに電話して指示を仰ぐ。
膨らみの見分け方は簡単で、平らな机に置いてガタつく、ケースの合わせ目が開いている、ゴムのような手触りに変わっている、あたりが分かりやすい兆候になる。
リサイクルマークがないもの
スリーアローのリサイクルマーク(Li-ionの表記が入った三角の矢印)は、JBRC加盟メーカーの製品に付いている。ノーブランドの格安品や海外通販で買ったものには付いていないことがあり、その場合は店頭ボックスでは引き取れない。
ただし「マークがないから捨てられない」わけではない。前述の通り、火災防止を優先してマークの有無を問わず回収する自治体が増えている。店で断られたら自治体、が基本の流れだと考えておけば迷わない。
膨らんだものを持ち込む前にやること
膨張品はそれ自体が発火リスクを抱えた状態にある。処分先が決まるまでの数日を、どこにどう置くかが地味に重要だ。
まず充電しない。使い切ろうとして接続するのも避ける。保管場所は直射日光の当たらない、涼しく風通しのいいところ。紙や布に埋もれさせず、金属製の缶や不燃性の容器に単独で入れておくと、万一発熱しても周囲に燃え移りにくい。ベランダに置く人がいるが、夏場の高温は電池にとって最悪の条件なので室内の涼しい場所のほうがいい。
そのうえで自治体の窓口に電話する。持ち込みの可否、袋の指定、受付時間を先に確認しておけば、窓口で往復する手間がなくなる。
強く押して空気を抜こうとする/分解して電池セルを取り出す/穴を開ける・切る/水没させる。いずれも内部ショートを誘発する行為で、その場で発火する可能性がある。

出すときの絶縁のしかた
状態が正常なものでも、そのまま裸で出すのはよくない。回収ボックスの中で端子同士が触れ合えばショートするからだ。作業は1分で終わる。
USB-CやUSB-Aの差込口、Lightningケーブル一体型なら先端の金属部分。電気の出入り口をすべて見つける。
ビニールテープかセロハンテープを端子の上から貼り、金属面が露出しないようにする。貼りにくい形状なら、テープを重ねて確実に覆う。
複数まとめて処分するときは、1個ずつポリ袋に入れて口を閉じる。互いに接触しなければ、それでほぼ事故は防げる。
ケーブルや充電器は電池ではないので、この回収ボックスではなく小型家電回収や自治体の分別区分に従って出す。
発火事故が起きている現状
面倒に思える手順だが、数字を見ると納得できる。環境省の調査では、令和5年度の廃棄物処理過程でリチウムイオン電池に起因した事故は、発煙・発火を含めて年間2万件を超えている。ごみ収集車の車両火災も各地で起きていて、東京消防庁の資料では、2024年のごみ収集車の火災33件のうち14件がリチウムイオン電池関連と最多を占めた。
収集車が燃えれば、その日の作業員が危険にさらされる。処理施設で燃えれば、地域のごみ処理そのものが止まる。テープ一枚の手間で防げるのが不良品の混入ではなく、こういう規模の話だと知っておくと、面倒くささの感じ方が変わる。
ちなみに、モバイルバッテリーと同じくリチウムイオン電池を積んでいるのがポータブル電源だ。容量が二桁違うぶん、寿命の見極めも処分の段取りも一段慎重にやる必要がある。防災用に備えている人は、姉妹サイトのポータブル電源の寿命と廃棄の記事も合わせて読んでおくといい。
買い替えるなら回収とセットで考える
処分の目処が立ったら、次の1台の話になる。ここで学習しておきたいのが、リサイクルマークの有無を買う前に確認するという視点だ。安さだけで無名の製品を選ぶと、数年後にまた同じ「捨てられない」で悩むことになる。PSEマークとリサイクルマークが付いた、サポート窓口のあるブランドを選んでおけば、出口まで含めて安心して使える。
容量や出力の選び方、20000mAhが本当に必要かどうかといった話はモバイルバッテリーの選び方にまとめてある。持ち歩く距離と充電したい機器で最適解はかなり変わるので、買う前に一度目を通してほしい。
寿命のサインを先に知っておく
膨らんでから慌てるより、その手前で入れ替えるほうが安全だし気分もいい。充電の減りが妙に早い、本体が熱を持つ、満充電にしても以前ほど機器を充電できない。このあたりが出てきたら交代の時期である。目安として、リチウムイオン電池は充放電300〜500回程度で容量が落ち始める。毎日使えば2年前後で寿命だ。
詳しい判断基準はモバイルバッテリーの寿命で解説している。良い道具は長く使いたいが、電池だけは別枠。消耗品として2〜3年で入れ替える前提で付き合うのが、結果的に一番気持ちよく使える。
まとめ|出し先が分かれば引き出しの奥から救い出せる
整理すると、正常品はリサイクルマークを確認して端子をテープで絶縁し、家電量販店の回収ボックスへ。マークがない、大きくて入らない、店で断られたなら自治体の回収窓口へ。膨らんでいるものはボックスに入れず、涼しい場所に単独で保管したうえで自治体かメーカーに相談する。この3手で、ほぼすべてのケースが片付く。
実際にやってみると、拍子抜けするほどあっさり終わる。引き出しから4つ消えて、空いたスペースにケーブルが収まった。あの「捨てられないもの」が消えるだけで、部屋の中が少し軽くなる。皆さんの引き出しにも、たぶん1つは眠っているはずだ。回収の可否や実施期間は地域・店舗で異なるため、最終的な出し方はお住まいの自治体の案内で確認してほしい。
