朝の空気が急に冷たくなった。皆さんはもう押し入れを開けましたか。一人暮らし10年、冬支度で引っ張り出してくる道具はいつの間にか固定されてきた。この記事では毎年必ず出す三点と、あとから買い足して正解だったもの、そして毎年つまずく「しまう場所」の話までをまとめる。
冬の道具は毎年同じ顔ぶれになる
夏の道具は入れ替わりが激しい。扇風機は壊れるし、冷感グッズは流行に振り回される。ところが冬の道具は、なぜか毎年同じ顔ぶれが押し入れから出てくる。こたつ、電気毛布、加湿器。10月の終わりごろに一斉に引っ越してきて、3月の終わりに一斉に帰っていく。
理由ははっきりしていて、冬の道具は「体を温める」という目的が単純だからだ。目的が単純な道具は買い替える理由が生まれにくい。実際、この三点はどれも5年以上使っている。壊れないというより、壊れる要素が少ない。
そしてもう一つ。毎年使い続けている道具は、例外なく出すのが簡単な道具だった。押し入れの奥にしまい込んだ道具は、寒くなっても出てこないまま春が来る。冬支度は性能の話であると同時に、動線の話でもある。

押し入れから出してくるもの
10月下旬、天気予報の最低気温が二桁を割るあたりが合図になる。段ボールを崩し、押し入れの上段から順に下ろしていく。この作業自体は面倒なのだが、こたつ布団を広げた瞬間だけは毎年ちょっとうれしい。
こたつ
1LDK賃貸で、こたつはリビングの主役になる。部屋の中心に低い面ができると、生活がそこへ集まってくる。食事も作業も、気づけばこたつの上でやっている。素晴らしい発明である。ずっと入っていたい。
暖房器具としても効率がいい。こたつは布団の内側という狭い空間だけを温めるので、部屋全体を温めるエアコンに比べて消費電力がかなり小さい。足元さえ温まっていれば、エアコンの設定温度は1〜2度下げても平気になる。厳密な節電額は住まいと使い方で変わるが、暖房費の体感が変わるのは確かだ。
誤算もあった。こたつ布団はとにかくかさばる。洗濯機に入らないサイズのものを買ってしまい、初年度にコインランドリーへ担いでいくはめになった。買うなら家の洗濯機で洗える薄手のものか、洗える中掛けと合わせる構成にしたほうがいい。あと、こたつは人を吸い込む。予定は入れないほうがいい。
電気毛布
冬の道具で費用対効果がいちばん高かったのは電気毛布だ。値段は数千円で、消費電力は一般的な製品でおおむね30〜60W程度。エアコン暖房が数百Wから1kWを超えることを考えると、桁が違う。寝る前に敷いておくと、布団に入った瞬間が別世界になる。
使い方のコツは、寝る30分ほど前に強で温めておいて、就寝時には切るか弱にすること。つけっぱなしだと明け方に汗をかいて、かえって寝覚めが悪い。
電気毛布や湯たんぽは、長時間同じ場所に当て続けると低温やけどの原因になる。就寝中は弱設定にするか、電源を切って使う。
敷きタイプと掛けタイプで迷うなら、まず敷きタイプでいい。掛けは布団と喧嘩することがあるが、敷きは失敗しにくい。
加湿器
三点の中で唯一、手入れをサボると罰が当たるのが加湿器である。冬の室内は暖房で一気に乾く。湿度は40〜60%あたりを目安に保つと、喉の乾燥も静電気も明らかに減る。数字で管理できるものは数字で管理したい。
方式は大きく分けて四つある。それぞれ性格がまるで違うので、置く部屋と手入れの許容量で選ぶことになる。
| 方式 | 電気代 | 手入れ | 向く人 |
|---|---|---|---|
| 気化式 | 安い | フィルター洗浄が必要 | 電気代を抑えたい人 |
| 超音波式 | 安い | こまめな水替え・清掃が必須 | 静かさとデザイン重視 |
| スチーム式 | 高め | 楽(煮沸するため) | 手入れを最小にしたい人 |
| ハイブリッド式 | 中間 | 中間 | 広めの部屋で使う人 |
超音波式は水の中の雑菌もそのまま部屋にまくことになるため、水を毎日替えてタンクを洗える人向けだ。逆に、平日は帰宅が遅くて手入れどころではないなら、加熱して蒸気を出すスチーム式のほうが結果的に長く使える。手入れが面倒な加湿器は、翌年もう出してこない。
買い足して正解だったもの
三点の脇を固める小物が、地味に効く。まず温湿度計。加湿器を買ったのに湿度を測っていなかった年があって、あれは何をしていたのだろうと思う。千円程度のもので十分で、数字が見えると加湿器の運転を切り替える判断が早くなる。
次にサーキュレーター。夏の道具だと思って夏だけ使っていたが、冬こそ本領だった。暖かい空気は天井付近に溜まる。天井へ向けて弱く回すだけで、足元の寒さがかなり変わる。夏に買ったものをそのまま冬も使えるので、追加コストがゼロなのがいい。
冬支度で追加投資するなら、暖房器具そのものより「温湿度計とサーキュレーター」のほうが体感の変化が大きい。
着る毛布も買ってみた。暖かい。暖かいのだが、袖が長すぎてキーボードを打つときに邪魔になり、結局リビングでテレビを見るとき専用になった。用途を絞れば悪くない。話がそれるが、この「用途が絞られた結果ちゃんと定着した道具」というのはけっこうある。万能を狙って買ったものほど使わなくなる。

しまう場所という毎年の問題
冬の道具の最大の敵は、性能でも電気代でもなく体積だ。こたつ布団と加湿器は、オフシーズンに押し入れの容積をごっそり持っていく。1LDKの収納は有限で、ここを解決しないと来年の冬支度が憂鬱になる。
こたつ布団は圧縮袋に入れる。掃除機で吸うタイプでも手で押し出すタイプでもいいが、入れる前に必ず完全に乾かすこと。湿ったまま圧縮すると、春に開けたときに悲しいことになる。加湿器はタンクとトレイの水を抜き、フィルターを洗って完全乾燥させてからしまう。ここを手抜きすると、翌シーズンの初運転で嫌なにおいが部屋に広がる。
こたつ布団は洗って完全に乾かしてから圧縮袋へ入れる
加湿器は水を全部抜き、フィルターとタンクを乾燥させる
電気毛布はコントローラーのコードを本体に巻きつけず、ゆるくたたむ
電気毛布のコードは、きつく巻くと内部の断線につながる。ゆるくまとめて、重いものの下敷きにしない。この一手間で寿命が変わる。
そして収納の位置。押し入れの奥ではなく手前に置くこと。出すのに5分以上かかる道具は、翌年から出さなくなる。10年やってきて、これがいちばん確実な法則だった。
選び方の話はこちら
この記事は「毎年出してくるもの」の話なので、個々の道具をどう選ぶかは踏み込んでいない。方式やサイズの比較から入りたい人は、それぞれの選び方記事のほうが早い。
こたつは天板サイズとヒーターの種類、そして布団の洗濯可否で使い勝手がまるく変わる。そのあたりはこたつの選び方にまとめてある。電気毛布は敷き・掛けの違いと洗濯方法、ダニ対策機能の要不要が判断の分かれ目になるので、電気毛布の選び方を参照してほしい。
まとめ|出す手間が少ない道具ほど毎年使う
冬支度で毎年出してくるのは、こたつ・電気毛布・加湿器の三点。そこに温湿度計とサーキュレーターが加わって、今の形に落ち着いた。どれも高価なものではないし、話題の新製品でもない。ただ、10年のあいだ入れ替わらなかったという事実がすべてを語っている。
選ぶときに効いた基準は二つだけだった。手入れが自分の生活に収まるかどうかと、出し入れが面倒でないかどうか。性能表の数字で勝っていても、押し入れの奥から引っ張り出すのに気合いが要る道具は、二年目から出番がなくなる。冬の道具を買うときは、しまう場面まで一度想像してみてほしい。
今年もこたつを出した。作業効率は落ちる。それでも出す。
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シリーズの他の回もどうぞ。前回はキッチンで10年使い続けている道具、次回はデスク周りで買い直してでも使いたいものを扱っている。同じ「長く使えたかどうか」という物差しで選んでいるので、並べて読むと基準が見えてくるはずだ。
