加湿器を買おうとして、レビュー欄で必ずぶつかる言葉がある。「電気代が高い」。特に象印のスチーム式は、性能を絶賛する声とセットでこれが出てくる。ではいくらなのか。この記事では、加湿方式ごとの消費電力を並べて1時間・1日・1か月の電気代を出し、スチーム式が高くなる理由と、それでも売れている理由を整理する。最後に、電気代を抑える使い方と方式の選び方までまとめた。
方式でこれだけ変わる電気代
先に結論から。加湿器の電気代は、メーカーや価格帯ではなく加湿方式でほぼ決まる。水を熱するかどうか、その一点で消費電力が二桁変わるからだ。
以下は各方式の一般的な消費電力と、電気料金の目安単価31円/kWh(全国家庭電気製品公正取引協議会が2022年に改定した目安)で計算した電気代である。1日8時間・30日使った場合の金額を並べた。
| 方式 | 消費電力の目安 | 1時間 | 1日8時間×30日 |
|---|---|---|---|
| 気化式 | 3〜20W | 約0.1〜0.6円 | 約20〜150円 |
| 超音波式 | 20〜50W | 約0.6〜1.6円 | 約150〜370円 |
| ハイブリッド式(温風気化) | 100〜250W | 約3〜8円 | 約700〜1,900円 |
| スチーム式 | 300〜500W | 約9〜15円 | 約2,200〜3,700円 |
同じ「加湿器」でありながら、気化式とスチーム式では月の電気代が20倍以上ひらく。数百円と数千円の差なので、本体価格の差より効いてくる年もある。まずはこの縦の並びを頭に入れておきたい。
この記事の計算の前提
電気料金は31円/kWh(税込)で統一して計算している。
実際の単価は契約する電力会社とプランで変わるため、ご自身の検針票の単価に置き換えると精度が上がる。

スチーム式の電気代
具体的な機種で見るのが早い。象印のスチーム式加湿器(EE-DC型・EE-DD型の50サイズ)の公称スペックは、湯沸かし時985W、加湿時410W。ポットの技術をそのまま加湿器にした構造なので、消費電力もポットのそれに近い。
31円/kWhで計算すると、湯沸かし中は1時間あたり約30.5円、加湿運転中は約12.7円。立ち上げの沸騰に20分ほどかかり、そのあとは加湿運転に移る。強運転で連続8時間動かすと、電力量はおよそ3.5kWh、金額にして約108円になる。これを毎日30日続ければ約3,200円。冬の3か月で1万円近い。
ちなみに実際の運転では、設定湿度に達すると加湿量を落として動くため、常に410Wを食い続けるわけではない。上の金額は強運転を回し続けた場合の上限に近い数字だと考えてほしい。
なぜ高くなるのか
理由は単純で、水を沸騰させているから。1リットルの水を蒸気に変えるには、温度を上げるエネルギーに加えて、液体から気体に変わるときのエネルギー(気化熱)が要る。これが大きい。他の方式はこの気化熱を、ヒーターではなく部屋の空気の熱から奪って加湿している。だから電気を使わずに済む代わりに、加湿しているあいだ部屋の体感温度がわずかに下がる。
スチーム式は自前の電気で熱を用意し、しかもその熱ごと部屋に放出する。電気代が高い代わりに、部屋を冷やさない。高いのではなく、仕事量に対して正直な数字だと言ったほうが近い。
それでも選ばれる理由
電気代で不利なのに象印のスチーム式が売れ続けているのは、生活側のメリットが分かりやすいからだ。
まず加湿力。沸騰させて蒸気を出すので、外気温が低くても加湿量が落ちにくい。気化式は寒くて乾いた朝に力を出しきれないことがあるが、スチーム式にはその弱点がない。次に手入れ。フィルターも気化フィルターもなく、内部はポットと同じ構造で、クエン酸洗浄モードを回して内側を拭くだけで済む。フィルター代がゼロで、掃除の手間もほぼゼロというのは、電気代の差をある程度は帳消しにする。
さらに、煮沸された蒸気が出るので雑菌が飛びにくい。加湿器の衛生面を気にする人がスチーム式に流れるのは、この一点が大きい。
吹き出し口からは高温の蒸気が出る。小さな子どもやペットがいる家庭では、手の届かない置き場所を確保できるかを先に確認したい。
気化式と超音波式の電気代
対極にあるのが気化式。ファンで風を当てて水を自然に蒸発させるだけなので、電気を食うのはファンとわずかな制御回路のみ。消費電力は3〜20W程度、1か月つけっぱなしでも数百円に収まる。扇風機より軽い電力で動いていると考えると分かりやすい。
弱点は加湿の立ち上がりが遅いことと、気化フィルターの手入れが必要なこと。フィルターは水垢で目詰まりすると加湿量が落ち、1〜数シーズンで交換になる。電気代で浮いた分がフィルター代に流れる構図は否定できない。
超音波式は、振動で水を細かい霧にして飛ばす。加熱しないので消費電力は20〜50W程度と低く、月に数百円。デザインの選択肢が多く、卓上サイズやアロマ対応が豊富なのもこの方式だ。ただし水をそのまま霧にする都合上、タンクの水が汚れていればそれも一緒に飛ぶ。毎日水を替えてタンクを洗える人向けである。
電気代だけで選ぶなら気化式か超音波式の一択。ただし手入れの手間はスチーム式より確実に増える。
ハイブリッド式はどのあたりか
ハイブリッド式には二系統ある。よく見かけるのは温風気化式で、気化式にヒーターを足して、風を温めることで蒸発を助ける方式。ダイニチなどが得意とするタイプだ。ヒーターが入っている間の消費電力は100〜250W程度で、最大出力なら1時間あたり数円から8円ほど。ただし湿度が上がればヒーターは切れ、気化式として静かに動く時間が長くなる。だから実際の月額は、最大消費電力から計算した金額よりかなり下に着地する。
もう一系統が超音波+ヒーターのハイブリッド。水を温めてから霧にする方式で、消費電力はその中間に位置する。
ハイブリッド式は「スチーム式ほど食わず、気化式より早く加湿できる」ちょうど真ん中の選択肢。カタログの最大消費電力だけを見て敬遠するのはもったいない方式である。

一日つけっぱなしにしたときの目安
24時間つけっぱなしにしたらどうなるか。これも計算しておく。
| 方式 | 24時間 | 30日つけっぱなし |
|---|---|---|
| 気化式(10W想定) | 約7円 | 約220円 |
| 超音波式(35W想定) | 約26円 | 約780円 |
| ハイブリッド式(平均80W想定) | 約60円 | 約1,790円 |
| スチーム式(410W連続) | 約305円 | 約9,150円 |
スチーム式の24時間連続は、あくまで机上の上限値である。象印の50サイズはタンク容量4.0Lで、強運転なら約8時間・弱運転なら約32時間で水がなくなる。給水せずに丸一日回りっぱなしになることは構造上ほぼない。とはいえ、強運転で長時間回す使い方をすれば、冬のあいだの電気代が月数千円単位で増えるのは確か。ここは正直に見積もっておきたい。
逆に気化式は、24時間つけっぱなしでも月200円台。つけっぱなしが前提の暮らし方なら、方式選びの意味はさらに大きくなる。
電気代を抑える使い方
方式を変えずに電気代を下げる余地は、意外とある。効くのは次の3つだ。
ひとつめは湿度設定を欲張らないこと。快適とされる室内湿度は40〜60%で、60%を超えると結露やカビのリスクが上がる。自動運転の目標湿度を50%前後にしておけば、加湿しすぎによる無駄な運転が減る。数字を上げるほど気持ちがいい気がするが、上げた分だけヒーターが働き続けるだけである。
ふたつめは部屋を閉めること。ドアが開けっぱなしだと廊下まで加湿することになり、目標湿度に届かないまま運転が続く。加湿器は部屋の容積に対して働くので、扉一枚で消費電力が変わる。
みっつめは置き場所。エアコンの温風が直接当たる場所に置くと、湿度センサーが乾いた空気を拾い続けて過剰に運転する。窓際も同じで、冷気で結露するだけで部屋は潤わない。詳しくは加湿器の置き場所の記事にまとめたが、置き場所を変えるだけで体感の効きが変わることは珍しくない。電気代の話をしているのに置き場所の話になるのは、この2つが直結しているからだ。
設定湿度50%前後・ドアを閉める・エアコンの風が当たらない場所。この3つで、同じ機種のまま運転時間が減らせる。
電気代で選ぶなら方式から決める
ここまでの数字を、暮らし方に翻訳しておく。
ワンルームや寝室でしか使わず、電気代を1円でも抑えたいなら気化式。フィルターの手入れを月1回できることが条件になる。デザイン重視で卓上に置きたい、寝る前の数時間だけ使いたいなら超音波式。ただし毎日の水替えは必須だ。リビングをしっかり加湿したい、けれどスチーム式の電気代は避けたい——という欲張りな要求にはハイブリッド式が答えになる。
そして、手入れの手間を何よりも減らしたい人、加湿の立ち上がりの速さを買いたい人、衛生面が気になる人はスチーム式。月2,000〜3,000円を「フィルター掃除をしなくていい料金」として払えるかどうかが分かれ目になる。方式ごとの構造や手入れの違いは加湿器の方式の違いで詳しく比較しているので、迷っているなら先にそちらを読んでほしい。
まとめ|加湿力と電気代はだいたい引き換えになる
加湿器を並べて眺めていると、結局は同じ結論にたどり着く。強く速く加湿するには熱が要り、熱には電気が要る。気化式が安いのは性能をケチっているからではなく、部屋の熱を借りているから。スチーム式が高いのは、その熱を自前で用意しているからだ。
だから「電気代が高い」というレビューは、半分は事実で、半分は仕様の説明でしかない。象印のスチーム式に月3,000円払うのか、気化式でフィルターを洗いながら月200円で過ごすのか。どちらも間違いではなく、何を面倒に感じる人かで答えが変わる。
個人的には、冬に加湿器の手入れを忘れない自信がなかった。だから熱を買った。それだけの話である。
なお、製品ごとの消費電力やタンク容量、価格は改良やモデルチェンジで変わる。購入前に各メーカーの公式サイトで最新の仕様を確認してほしい。
