電気ケトルの電気代|電気ポットとやかんと比べてどうか

ステンレス製の細口電気ケトルと電源プレート

電気ケトルは電気代が高い、という話をときどき聞く。1200Wと聞くと確かに身構える。ドライヤーと同じくらいの数字だ。ただ、電気ケトルが1200Wを使っているのは1分か2分で、そこが電気ポットやガスコンロとの決定的な違いになる。この記事では、1回沸かすといくらかかるのかを湯量ごとに出した上で、電気ポット・ガスのやかんと同じ土俵に並べ直し、電気代が本当に変わる要素と、今日から効く使い方まで整理する。

目次

1回沸かすのにいくらかかるのか

先に結論から。カップ1杯(140mL)で約0.5円、1L沸かして約3〜4円である。1日に何度沸かしても、コーヒーやお茶を飲む程度の使い方なら月100円前後に収まる。

計算の根拠を書いておく。水を1℃上げるのに必要な熱量は決まっていて、20℃の水を100℃まで上げるには1Lあたり約335kJ、つまり約0.093kWhがいる。実際のケトルは熱の一部が本体や湯気に逃げるので、効率を8割ほどとみて0.11kWh前後。ここに電気料金の目安単価31円/kWh(家電公取協が定める目安。実際の単価は地域や契約で26〜41円ほどの幅がある)を掛けると、1Lで約3.4円という数字になる。

沸かす量消費電力量の目安電気代の目安
カップ1杯(140mL)約0.016kWh約0.5円
マグカップ2杯(300mL)約0.033kWh約1.0円
カップ麺1個(500mL)約0.055kWh約1.7円
満水(1.2L)約0.13kWh約4.1円

朝にコーヒー、昼にカップ麺、夜にお茶。仮にこの使い方を毎日続けても1日3円ほど、ひと月で90円ほどにしかならない。電気ケトルは「瞬間的な電力は大きいが、動いている時間が短い家電」で、電気代を考えるときはワット数ではなく、使った時間まで含めた消費電力量(kWh)で見ないと感覚が狂う。

電気代は「消費電力(W)×使った時間」で決まる。1200Wでも1分なら0.02kWh、つまり0.6円。

温度表示パネル付きの真空断熱電気ポット

電気ポットと比べる

比較でいちばん誤解が多いのがここだと思う。電気ポットは沸かすための消費電力量そのものはケトルと大差ない。同じ量の水を同じ温度まで上げるのだから、当たり前といえば当たり前である。差がつくのは保温だ。

電気ポットのカタログには「1日あたりの消費電力量」が載っている。真空断熱を使った省エネモデルで1日0.6kWh前後、断熱の弱いモデルや大容量だと1kWh近くになる。日本電機工業会の測定条件は、室温23℃で1日に2回沸かし、再沸とう1回、90℃で23時間保温という前提。つまり、この数値のほとんどは「23時間保温し続けた分」である。

1日の消費電力量1日の電気代ひと月
電気ケトル(1日1L沸かす)約0.11kWh約3.4円約100円
電気ポット(3L・省エネ型)約0.6kWh約19円約570円
電気ポット(保温性能が低い機種)約1.0kWh約31円約930円

年間にすると5,000〜10,000円ほどの差になる。電気ポットが高いのではなく、保温という機能にそれだけの電気を使っている、というだけの話だ。

保温し続けるという前提の違い

保温は、放っておくと冷めていく湯を、冷めた分だけ温め直し続ける動作である。魔法びん構造で放熱を抑えたモデルほどこの補充が少なくて済み、電気代も下がる。逆にいえば、どれだけ省エネを謳っても、湯を温かいまま置いておく限りゼロにはならない。

だから比較の答えは単純で、使う直前に必要な分だけ沸かすならケトルが安く、1日に何度も湯を使い、そのたびに沸かすのを待ちたくないならポットの保温代を払う価値がある。赤ちゃんのミルク、来客の多い家、ずっと在宅で日に何杯もお茶を淹れる人。こういう場面では、待ち時間ゼロという体験に月500円ほど払っている、という理解でいい。逆に一人暮らしで日に2〜3回しか湯を使わないなら、保温は払わなくていいお金である。

ガスのやかんと比べる

ここは契約しているガスの種類で結論が変わる。同じ1Lを沸かすのに必要な熱量は同じでも、やかんは炎の熱が鍋肌の横を逃げていくため、効率は5割前後まで落ちる。ただ、都市ガスは単位熱量あたりの値段が安いので、効率の悪さを価格で取り返してしまう。

1Lを沸かす費用の目安備考
電気ケトル約3.4円31円/kWhで計算
やかん(都市ガス)約2〜3円単価130〜220円/m³の幅で変動
やかん(プロパンガス)約5円単価720円/m³前後で計算

都市ガスならやかんがわずかに安く、プロパンなら電気ケトルのほうが安い。ただし差は1回あたり1〜2円で、1日1Lとして月に数十円。この程度の差なら、電気代の比較で選ぶ意味はほとんどないと言い切っていい。

むしろ効いてくるのは時間と気配りのほうで、1Lを沸かすのにケトルは4〜5分、やかんは10分前後かかる。しかも火にかけた鍋は見ていないといけない。夏場にキッチンを熱しないという意味でもケトルに分がある。ガス代と電気代の1円を追うより、そちらで決めるべきものだと思う。

電気代が変わる要素

ここまでの数字を見て気づくと思うが、電気ケトルの電気代を決めているのはほぼ「沸かした水の総量」である。機種の性能でも、値段でもない。

沸かす量と回数

意外に思われるのが、消費電力(W)の大小がほとんど電気代に効かないという点だ。1200Wのケトルは速く沸くが、その分だけ短時間で終わる。600Wのケトルは倍の時間がかかる。掛け算の結果は同じで、むしろ加熱時間が長いほど周囲へ逃げる熱が増えるため、低ワットのほうがわずかに不利になる。

効くのは回数のほうだ。ケトルは水だけでなく本体の金属やヒーターも一緒に温めていて、この分は沸かすたびにかかる固定費のようなもの。冷めきったケトルで0.3Lを3回沸かすより、0.9Lを1回で沸かすほうが総量は少なくて済む。とはいえ、これも1回あたりコンマ数円の世界の話ではある。

沸かしすぎて余った湯を流しに捨てているなら、それが唯一のはっきりした無駄。使う分だけ量って入れる。

一度に沸かして水筒に移す

電気代の観点で最も効率がいいのは、必要量をまとめて沸かし、真空断熱の水筒やステンレスボトルに移してしまうやり方である。保温のための電気を一切使わずに、ポットに近い使い勝手を手に入れられる。

朝に1L沸かして、半分をコーヒーに、残りを保温ボトルへ。夕方まで70〜80℃を保つので、その間に飲むお茶は沸かし直さずに済む。この運用にすると、日に何度も湯を使う生活でも1日1回の加熱で足りるようになる。電気ポットの保温代(月500円前後)を、水筒1本で置き換えている格好になる。

マットな質感の真空断熱ステンレスボトル

節約になる使い方

電気代の絶対額が小さい家電なので、劇的な節約は望めない。それでも積み上がるところは決まっている。

まず、注ぐ水を冷たすぎるものにしない。冷蔵庫で冷やした水(5℃)から沸かすと、常温水(20℃)より2割ほど多く電気を使う。麦茶用に冷水を沸かす理由は普通ないので、常温の水道水でいい。

次に、沸いた湯をすぐ使う。沸騰させてから10分放置すると、それだけで湯温は大きく落ち、飲む頃には沸かし直したくなる。沸かすタイミングを、湯を使う直前に寄せる。カップ麺の湯を先に沸かして、その間にフタを開けて、という段取りは実は逆で、準備を先に終わらせてから沸かすほうが得になる。

そして、内側にたまる白い水垢を放置しない。カルシウムなどのスケールがヒーター面を覆うと熱が水に伝わりにくくなる。クエン酸で年に数回洗うだけで、沸く時間も戻るし、湯の味も変わる。これは電気代というより、道具を長く使うための話でもある。

やってはいけないこと

空焚きは故障と事故のもと。最低水位より下で電源を入れない。

ケトルは他の高出力家電(電子レンジ・ドライヤー等)と同じコンセントから同時に使わない。合計1500Wを超えるとブレーカーが落ちる。

たこ足配線や延長コード経由での使用は発熱の原因になる。壁のコンセントに直接挿す。

温度調節つきは電気代に効くのか

効く。しかも理屈がはっきりしている。20℃の水を100℃まで上げるのに比べ、70℃で止めれば温度差は80℃から50℃へ、必要な熱量は約6割になる。1Lを70℃で沸かすなら電気代は約2.1円、沸騰させる場合の6割で済む。緑茶や粉ミルク、ドリップコーヒーのように100℃を必要としない用途が多い家では、地味に効いてくる。

ただし注意がひとつある。温度調節つきの多くは保温機能を併せ持っていて、これを常時オンにすると話が逆転する。保温は1時間あたり0.5〜1円ほどかかるので、8時間つけっぱなしにすれば、沸かす電気代の何倍にもなる。温度調節で浮いた分を保温で使い切る、という構図になりやすい。

設定温度で止められるので、飲み物ごとの適温が出せて、電気も少なく済む

保温を常用すると小型の電気ポットと同じ電気代になり、本体価格も倍近い

温度調節つきの選び方や、どの温度が何に向くかは温度調節つき電気ケトルの選び方で詳しく書いている。買う前に読んでほしい。

買い替えるなら消費電力も見る

電気代だけを理由に買い替える価値はない、というのが正直なところだ。何しろ月100円の家電である。買い替えの理由は別のところ——注ぎ口の形、フタが外れるか、内側がステンレスかプラスチックか、湯量が見えるか——にあって、電気代はその後についてくる。

そのうえで消費電力の欄を見る意味はある。大きい数字ほど速く沸き、同じ量なら電気代はほぼ同じ。ただし住まいの電気容量とは相談がいる。古い賃貸でキッチンと電子レンジが同じ回路にぶら下がっていると、1250Wのケトルは高確率でブレーカーを落とす。この場合は900W前後のモデルを選ぶほうが暮らしは平和になる。速さを1分諦めるだけで、朝の停電がなくなる。

容量も同じで、大は小を兼ねない。一人暮らしで1.2Lを選ぶと、毎回8割の水位に届かないまま使うことになり、本体だけが無駄に大きい。0.8L前後で足りる生活は多い。このあたりの見極めは電気ケトルの選び方にまとめた。

まとめ|沸かす回数が分かれば損得もはっきりする

電気ケトルの電気代は1杯0.5円、1Lで3〜4円。ガスのやかんとはほぼ互角で、電気ポットとは月500円前後の差がつく。差の正体は保温であって、沸かす行為そのものはどの方式でも似たようなコストだった。

結局のところ、判断材料は「1日に何回、湯を使うか」に尽きる。2〜3回ならケトルで沸かして終わり。それ以上で待ちたくないなら、ポットを買うか、沸かした湯を保温ボトルに移すか。後者のほうが電気代はかからないが、注ぐたびにフタを開ける手間はある。手間を金で買うか、金を手間で節約するか、という選択である。

ちなみに、この記事を書きながら手元のケトルで湯を沸かした回数を数えたら、半日で5回だった。1杯ずつ淹れる派なので当然といえば当然で、それでも1日2円ちょっと。缶コーヒー1本で一週間分の湯が沸く。そう考えると、電気代を気にして淹れるのを我慢するのは、いちばんもったいない節約かもしれない。

電気ケトルを毎日使うと1ヶ月の電気代はいくらですか?

1日に1L沸かす使い方でひと月約100円、1日2Lでも約200円です。日常的にお茶やコーヒーを飲む程度なら、ひと月の電気代が数百円を超えることはまずありません。

電気ケトルとやかん、どちらが電気代(光熱費)は安いですか?

都市ガスならやかんが1Lあたり1円ほど安く、プロパンガスなら電気ケトルのほうが1〜2円安くなります。ただし差は月に数十円なので、沸くまでの時間と手間で選ぶほうが理にかなっています。

保温機能つきのケトルは電気代が高くつきますか?

保温1時間あたり0.5〜1円ほどかかります。半日つけっぱなしにすれば沸かす電気代の何倍にもなるため、使う時間帯だけオンにするか、沸かした湯を真空断熱の水筒に移す運用のほうが安く済みます。

なお、ここで挙げた電気代・ガス代は目安単価をもとにした計算値で、実際の単価は契約プランや地域、時期で変わる。正確な機種ごとの消費電力量は各メーカーの製品ページで確認してほしい。

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